漕ぎ出せ!人生の大海へ。
 
 その5 高校生に負けた日 

<<INDEX  <PREV NEXT>

 

  Opinion by Kurama / Site arranged by Habane
“Walking Man” by Music of my Mind

鞍馬 私は学生時代に教育実習に行きました。もう10年近く前の話です。

 現役で志望大学に入学した私の勉強方法や、どうすれば効率よく勉強できるかなどに興味を持ってたずねてくる生徒もいれば、自分は高校を卒業したら板金工になると言っている生徒もいました。

 いずれにせよ何かに興味を持っているということはよいことですが、良い大学に入って有名企業に就職することが幸せになる近道だと信じていた当時の私は彼と就職観について少し話をしました。

教育実習

教育実習

【会話の内容】

「今から(当時高1)将来決めて勉強しないってのはどうかと思うよ。それにまじめに勉強して普通に就職した方がいいんじゃない?」

生徒「勉強しなくたって就職できるならばその方がいいじゃん。」

でも板金工って収入が不安定なんじゃない。」

「始めてすぐ月30万円もらってる先輩もいるし、みんないい車乗ってるよ。金には困ってないみたい。」

でもほら、事故に遭ったりして働けないと給料もらえなかったりするよね。」

そんなの元気になってから取り返せばいいじゃん。ひとりなら何とか生きていけるよ。」

 別に板金工がだめだというつもりで書いているのではありません。あくまで実体験ですので。気を悪くした方がいたらばごめんなさい。

板金工

板金工

 最終的に、この議論は私の負けです。完全に私が丸め込まれています。

 誇りを持って板金工をしている方も大勢いらっしゃるでしょうし、フリーターかどうかも判断の分かれるところだと思います。

 そのことについてとやかく言うつもりはありません。

 ただ、このときの生徒との会話はフリーターを選んでしまう人たちとそうさせまいとする親や先生との間で交わされる、かみ合わない会話とまったく同じだと思います。

◆ 本人にはわからない大きな損失

 例えばいま皆さんがサラリーマンで、突然会社を解雇されて、アルバイトで生活しなければならなくなったらば相当困るはずです。私も困ります。

 うちは共働きですし、貯金もあるので、少しの間であればいいですがずっととなるといろんな不安があります。

アルバイト求人

アルバイト求人

【不安の例】

・住宅ローンが返せないのではないか。

・将来、子どもに十分な教育や食事が与えられないのではないか。

 アルバイトの身で住宅ローンと子どもを抱えたらば、今の労働時間ではなかなか対処しきれず、睡眠時間や家族と過ごす時間を削って働かなければいけないのではないかと心配になります。

 定職についている人が突然フリーターになった時に何が困るか、それは、「今の生活レベルを保てなくなる」ことです。

 もっと具体的に言えば、サラリーと余暇の少なくともどちらか一方(あるいは両方)のレベルが今より確実に下がるということです。

 これはあまりに大きな損失です。

ハローワーク

ハローワーク

 でも、はじめから、自ら望んでフリーターを選択してしまう人たちにはこれはわかりません。

 なぜならば、フリーターにならなければ得られたはずの生活レベルを経験するすべがないからです。

 自転車も知らない人にバイクの良さを説明するようなものです。

 会話がかみ合うはずがありません。

 でも、親にしてみれば問題は明らかで、今でさえ苦労して生活レベルを保っているのに、アルバイトの身でそのレベルを保てるわけはなく、子どもがもっと苦労することがわかってしまうのです。

 親としては子どもがそんな苦労をするのをみすみす見逃すことはできません。

 だから反対するのです。

◆ 「できるものならやってみろ」は愛か?

 ここは価値観の分かれるところだと思います。

 私は「大学を出て普通に就職してほしい。」と願っている両親に育てられたので、その考え方を引きずって部分もあるかも知れません。

 でも私には向上欲があって、もっといい生活をしたいとか、子どもにいい教育を与えてあげたいとかそういう欲求があって大学に行き、就職しました。

 今でも資格を取るための勉強を続けています。

 影響を受けたのは確かですが、選択したのは私自身です。

 親の教えを盲目的に信じているわけではない自信があります。

大学のキャンパス

大学のキャンパス

 放任主義だとか自己責任とかを盾にとって子どもの人生に介入しないことがよいと考えている親もいるかもしれません。

 口出ししすぎるのは過保護でよくないと。

 ですが、「過保護にしない」=「無保護」ではありません。

 親の経験から見て、子どもが間違った道を歩もうとしているときに、アドバイスしてあげるのは当たり前だと思いますし、ちゃんと理由を説明してその道を選ばないように導いてあげるのが人生の先輩としての責任だと考えています。

「できるものならやってみろ」といって、その失敗はリカバリーがきくのかをよく考えてみなければなりせん。

「失敗したらば自分で何とかするのは当たり前。どんな選択をしてどんな結果になろうと親には関係ない。」というのはあまりに無責任ではないでしょうか。

鞍馬【2019.8.19 リニューアル・アップ】

PAGE TOP


 

banner  Copyright(C) Kurama&Habane. All Rights Reserved.