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 NO-200 解決していないから歴史は繰り返す
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【常緑音楽館便り】#1311〜解決していないから歴史は繰り返す

 白人警察官による黒人のジョージ・フロイドさん殺害事件を契機に、アメリカだけでなく、北米、南米、欧州、アフリカと世界的に人種差別反対デモが燎原の火の如く燃えさかってきた。

 共和党内にも反発が出始め、トランプはいよいよ追い詰められていくだろう。昔の公民権運動のことが思い出される。

 アメリカでは、1960年代に入ると、黒人に対する差別の撤廃を訴える「公民権運動」が盛上がりを見せた。その成果として公民権法ができたのが、前回の東京オリンピックの年1964年だった。

 ボブ・ディランがデビューしたのは、その前年の1962年3月だが、当初は、アルバムはたいして売れず、歌手としてより、作詞・作曲家として知られる程度だった。

 存在が注目されるようになるのは翌1963年で、PPMことピーター・ポール&マリー(私はPPMの来日公演に行き、日比谷公園でポール・ストゥーキーと話したことがある。

 彼は2007年に横田めぐみさんに捧げる「Song for Megumi」を作っている)が、63年6月にディランの「風に吹かれて」をシングルでリリースし、100万枚の大ヒットとなったことによる(ディラン自身が歌う「風に吹かれて」もシングル・リリースされたが、こちらは売れなかった)。

 ディランはこの時期、政治的な集会に積極的に参加し、そこで運動の趣旨に合致するような曲を歌っていた。

 63年6月にミシシッピ州で開かれた学生全米調整非暴力委員会(Student Nonviolent Coordinating Committee(1960年に結成された、黒人学生を中心とした反戦・反差別の組織)主催の選挙人登録集会に参加し、公民権運動の中心的な組織である全国黒人地位向上協会(NAACP)のミシシッピ州の幹部が何者かによって射殺されたことを直接テーマとした「しがない歩兵〈Only a Pawn in Their Game〉」という自作の曲を歌った。

 さらに8月28日には、ワシントンD.C.で行われた人種差別撤廃を求める大規模なデモ「ワシントン大行進」にも参加し、ワシントン記念塔広場(私も行ったことがある)に集まった20万人にも及ぶ人々の前で、ディランは、「風に吹かれて」や、この「しがない歩兵」を歌った。キング牧師による「私には夢がある」の有名な演説が行われたのは、このときである。

 今と似たような雰囲気ではないか。

 Evergreen Music通算1311曲目は、常緑(Evergreen)とは必ずしも言えないが、あえてこの「しがない歩兵」をもって歴史に改めて目を向けたい。

 ♬ Only A Pawn In Their Game(Live, March On Washington 1963)/Bob Dylan

(後ろにジョーン・バエズが短時間映っている)

毒舌亭(2020.6.17up)

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♬ Only A Pawn In Their Game(Live, March On Washington 1963)/Bob Dylan

 

 

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