<<Index | <Prev / Next>
 その92 ネイルハウス
「モーニングコーヒー」Benchi time

 そうそう・・ネイルにデコレーションを施してくれる店~ではありません。

 今回の最初は、まずこの写真。

 何と!!? 高速道路らしき場所の上に、堂々と一軒家が建っているではありませんか。

 よく見ると側面はボロボロに崩れており、無理やりここだけ引きはがして残したような・・?

 実はコレ、中国で『ネイルハウス』と呼ばれる建物の一つ。

 土地の私的所有が禁止され、利用権さえ大幅に制限されている中国では、公共事業に伴う立ち退きを拒否した場合は、“見せしめ”のようにソコだけ残して工事が強行されるのでございます。

 

 このような家は1本だけ刺さった釘のように見えることから、『ネイルハウス(釘子戸)』と呼ばれているそうな。

 浙江省温嶺市にあるこの家の持ち主は、「800万円(日本円相当)で建てた家の立ち退きに350万円しか補償が出ない。これでは新しい家も建てられない。」として立ち退きを断固拒否。

 司法救済制度が整備されていない中国では如何ともしがたく、孤独な抵抗を続けるしかないのです。

 と、いうことは・・・そうです! このような“ネイルハウス”は、中国のいたるところに出現しているのです。

 二つ目の現場がコレ。

 をををを~!!

 これは福建省平和県の交差点状に屹立する三階建てのネイルハウス。

 ・・・というか、もともとあったアパートの一部分だけを残して、行政が無理やり削り取ったもの。

 ここまでされて居残っている住民・・・ツワモノと言うしかありません。

 このパターンでもう一枚↓

 うわぁ・・五階建てですよ!(しかも少し傾いてる?)

 ちなみに、ここに一年以上も居座っているツワモノは、写真右下の女性だそうです。浙江省瑞安市。

 こちらは上海・・・。

 これまでは整備中の事業でしたが、この上海の二階建ての小屋は既に供用開始された道路区画の歩道の上に居残っています。

 しかもその場所は、交差点の角!!

 横断歩道を渡ると、この家が邪魔をして、歩行者は車道を迂回するしか道はありません。

 こうなりますと、敵は行政ばかりでなく一般市民までを敵にまわしてしまいそうです。相当なプレッシャーでしょうね。

 市街地再開発に伴うこのようなネイルハウスのケースは、たくさんありますので、以下、サクサクと見て行きましょう。

 まるで現場事務所のようですが、この家も立ち退き拒否↓

  更地の真ん中にポツンと残されたアパート↓

 安徽省合肥市に半壊状態で残された五階建て↓

 南京。壁の文字と屋上の赤旗は、居住者本人の手による抗議のしるし↓

 幅広い歩道の中にあるので、むしろ違和感なし↓

 このパターンでもう一枚↓

 うわぁ・・便利かも(笑)

 ・・なんか、そこだけタイムスリップしたみたいです。

 次は広州市。ここではいくつかのビルが居残っています。↓

 溝が掘られているのも「嫌がらせ」の一環とのこと。これは酷い!

 ・・で、こうした“溝堀り”嫌がらせが嵩じると、こんなふうになる↓ 

 上は雲南省昆明市にあるネイルハウス。完全に掘で包囲された状態に。

 これでもかなり酷いと思いますが、もっと恐ろしいのは建設予定地を掘削して掘り下げられた場合。こうなります↓

 うわぁ・・ソコだけ“小高い丘”になっちゃってるよ!

 これは、湖北省宜昌市の建築現場に残された2世帯の家。電気と水道は夜になると断続的に通らなくなるそうであります。

 しかあしっ!!

 このやり方がもっとギリギリまで為されると、更に悲惨なことに↓

 ここまでやる!?

 この場所は市街地再開発を行ってショッピングモールを建設する予定地だそうですが、一軒だけ立ち退きを拒む家の周りを9メートルほど掘り下げて“陸の孤島”と化しています。

 もちろん、電気もガスも水道も不通・・ってか、どうやって昇り降りするんでしょうか?

 だけど、こういう人に密かに手助けする協力者もいるようで↓

 

 水の甕を引き上げているこの写真自体は別のネイルハウスですが、おそらくこんなふうにやっているものと。

 だから、立て篭もっている家族も極めて意気軒高。

 ほれ、こんなふうに↓

 色とりどりの抗議の看板と垂れ幕、そして注目すべきはコカコーラやSONYの広告看板(笑)

 きっと広告収入を得ているのでしょう。強靭な精神力に脱帽。

 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、巨額の債務を抱える地方政府が住民を強制的に立ち退かせて用地を接収・売却し、無理やり中央政府の経済目標の達成を図ろうとしていると非難しています。

 地方政府のやり方は、人権を無視して水道や電気などを一方的に止め、業者が住民に暴力をふるったり誘拐や暗殺まで起きていると指摘しているのです。

 そして、上の例のように“逞しく”抵抗できる居住者はむしろ少数派で、強制立ち退きに抗議して焼身自殺する悲惨なケースも2009年から11年までの間でも41件発生しました。

 チベットやウィグルでの焼身自殺はたまに記事になることもありますが、中国の内部でも“当たり前のように”同様な事件が起きているのです。

 そこまで踏み込まなければ達成できない国家の成長目標・・・いったい誰のためのものなのでしょうか。

 
 家を破壊されて泣き崩れる女性↑

 ちなみに、冒頭で紹介した浙江省温嶺市の高速道路上のネイルハウスは、その後以下のような状態に・・。

 そう・・立ち退きに同意して(させられて)取り壊しが始まりました。

 めでたし、めでたし・・・という気分にはなれませんけど。

 《配信:2015.9.29》

葉羽葉羽 うむぅ・・内容が社会問題だったので「岸波通信」の方で書くべきだったかも。

 

PAGE TOP


 

 Copyright(C) Habane. All Rights Reserved.