<<Index | <Prev / Next>
 その7 フニクリ・フニクラ
フニクリ・フニクラ」Nocturne

 これぞ世界初。元祖CMソング!

 岸波通信の「ご長寿伝説!」のBGMにもなっている「フニクリ・フニクラ」ですが、これはもちろん、ネタ元の「さんまのSUPERからくりTV」ご長寿早押しクイズのテーマソングだったから。

ご長寿早押しクイズ

 でも、このメロディを聞くと、どうしても「鬼のパンツはいいパンツ♪」というフレーズが浮かんでくるのは僕だけではありますまい。

鬼のパンツは いいパンツ
つよいぞ つよいぞ

トラの毛皮で できている
つよいぞ つよいぞ

5年はいても やぶれない
つよいぞ つよいぞ

10年はいても やぶれない
つよいぞ つよいぞ

はこう はこう 鬼のパンツ
はこう はこう 鬼のパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも
みんなではこう 鬼のパンツ

 で、こんな粋な歌詞をだれが作ったのかと、JASRAC調べてみますと、公式には「作詞者不詳」とのこと。

 でも有力なのは、童謡歌手の田中星児さんであるらしいという説。

 NHK初代「うたのおにいさん」として知られる田中さんは、作詞・作曲を手がけるシンガーソングライターとしても活躍していて、NHK教育番組向けの曲を多く残しています。

NHK初代歌のおにいさん

(田中星児)

 さて、“この歌の元歌って、たしかベスピオ火山を扱ったイタリア民謡だったな”と調べましたら、そこで意外な事実が。

 実はこれ、民謡でも何でもなく、ケーブルカーの登山鉄道会社が作ったCMソング。

 しかも、歴史上、おそらく初めてのCMソングだったことが判明したのです。

 イタリアのトーマス・クック社によって、ベスビオ火山山頂までの登山鉄道「フニコラーレ」が完成したのが1880年。

 ところが、この登山鉄道(ケーブルカー)、非常に急勾配であったため、利用者がほとんどいなかったのであります。

フニコラーレ

←こんなに急角度!

 そこで、誘客促進のため、ルイジ・デンツァに依頼して出来上がったのがこの「フニクリ・フニクラ」。

 “おそらく”世界最古のコマーシャル・ソングであろうと言われております。

(フニクリ・フニクラは“でんでん電車”というような軽い意味だとか。)

 日本語の歌詞では、「♪ あか~い火を噴くあの山へ~登ろう~登ろう」という、まさにCMソングにふさわしい内容になっていますが、イタリアの原語の歌詞をチェックしましたら、またまた意外な事実が。

 実はこの歌の歌詞って、“情熱的な恋の歌”だったのです!

 ということで、以下に原語直訳の歌詞を。

 フニクリ・フニクラ (直訳)

 夕方 ねえ君 ぼくは登ったんだ
 判る どこへだか?
 そこは情けのうすい君の心が もう
 ぼくを弄ぶことのできないところさ
 そこは火が燃えているが 逃げれば
 君が逃げるがままにしておくところ
 後を追ったり 傷つけたりしないところさ
 見ているだけならば

 ※ 行こう 行こう 頂上めざして
 行こう 行こう 頂上めざして
 フニクリ フニクラ フニクリ フニクラ
 行こう 上へ 登山電車で!

 ぼくらは山へ行く ねえ娘さん
 歩くこともなく
 君は見る フランス、ポルトガルにスペイン
 ぼくは君を見てる
 ロープに引かれ、しゃべるやいなやもう着いてる
 ぼくらは空へ行くんだ
 まるで突風のように
 昇っていく

 ※ くりかえし

 登った 娘さん 登ったぞ
 もうてっぺんの頂上だ
 到着して 引き返して そして戻って
 ここに止まる!
 こちらのてっぺんの頭が向かうのは
 君のほう 君のまわり
 そして心は歌う でも煩わしいから
 いっそ結婚しよう 娘さん!

 うーむ、さすが情熱の恋の国・・・感心することしきりでございます。

 しかあしっ!

 この歌がイタリア民謡だと勘違いしたのは、この僕だけではないのです。

リヒャルト・シュトラウス

 それは誰かといえば、かのリヒャルト・シュトラウス。

 彼もまた、この曲がイタリアに古くから伝わる民謡であると勘違いし、1886年に作曲した交響的幻想曲「イタリアから」に、このメロディーを取り込んでしまったのです。

 発表後にそのことを知ったデンツァは激怒。

 シュトラウスを訴えて勝訴し、以降シュトラウスは、この曲が演奏されるごとにデンツァに著作権料を支払うハメになったのであります。

 彼は、それから1世紀後、極東の島国で「鬼のパンツはいいパンツ♪」という歌詞が付けられて国民の愛唱歌になることなど思いもよらなかったでしょう…。

←(まさに意外な事実。)daddy

 なお、当のケーブルカーは、1944年にポンペイを一瞬のうちに土石流で覆い尽くしたあのベスビオ火山噴火で破壊され消失。

 現在は、1990年に建設された二人乗りのリフトがお客を山頂まで運んでいます。

 また、“フニコラーレ登山鉄道”は、カプリ島に建設されたケーブルカーに、その名前をとどめているのです。

 《配信:2009.8.21》

葉羽葉羽 本編は後に【完全版】に改稿し、岸波通信その170「フニクリフニクラの真実」としてリニューアルしています。

 

PAGE TOP


 

 Copyright(C) Habane. All Rights Reserved.