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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
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<soul-20> 練習再開

 明は自分だけ時が止まった様に、福喜を睨み付けたまま固まり、警戒態勢を取った。

 その明を上から見下ろす様に次の言葉を発さずに眺めていた福喜だったが、スッとほんのわずかだが、目線を清宮に移すと、清宮が空気を読んでサッと右手を挙げる。

「さあさあ、皆さん。休憩はこの位にして、練習を再開しましょう!!」

「えー!?まだ話が!!」

 と子供の様にわめくツテに、仙吉は仙吉で駄々をこねて身震いしながら

「理由も何もわからんだろが!?」

 清宮は皆を優しく包むのかと言う程の柔らかい微笑みで、手を上げ下げして文句をつける面々を制してなだめると

「おいおいに、わかる時もあればわからないままもある。
 それが私達幽霊が身を持って唯一はっきりとわかっている事じゃなかったですか?」

 まだ未練がましくツテは

「ええ~?」

 と駄々をこねるが、清宮に言われた事が効いたのか、それ以上は言い返そうとはしなかった。

 それは他の面々も同様らしく、助八に至っては、もう元居た練習場所に、今まで伸び切っていた腰を直角に曲げながら、

「何じゃい。終わりかい」

 とお爺ちゃんそのもので戻って行く。

 半分の幽霊達は不平満面で、それでも自分の練習にブツブツ文句を垂らしながらも他の皆と一緒に戻って行った。

 しかし明はその状況など目に入らない様に、焦点を失いながら、冷や汗が首の後ろを一筋つたうのを覚えた。

 良かれ悪かれ、あの瞬間の覚悟があてはまらなかったからだ。

 自分の練習に立ち去ろうとする福喜の背中に、やっとの事で焦点を取り戻した明は言葉を投げかけた。

「あんた……知ってんのか?」

 福喜は立ち止まると頭だけ振り返らせて、明を注視する事無く自分の肩越しに

「何の話だい?知らないね。
 ただ、あんたが何でもかんでもぶちまけちまいそうだったからね。
 そんなのは、望む時にやるもんさ。
 清宮もわかったから止めに入ったんだろうよ。
 ジジイだからって馬鹿にしたもんじゃないね」

「?やっぱ何か知って………」

「……勘違いしないでおくれな。
 何でもお見通しって言いたいとこだが、そこまで仙人になる前に死んじまったからね。
 ゴリ押ししてまで、あんたの秘密は知りたくないってだけさ」

 そう言い置くと、さっさと、ぶつくさ面白がってわざと小言を言って待っている助八の方に向かって行ってしまう。

 残された明はしばし呆然としたままその場に立ち尽くしていた。

 灰色のコンクリートの床を見つめながら、水の入ったペットボトルをギュッと力いっぱい掴む事しか明にはできなかった。

 今の今まで自分が立たされた窮状を把握できなかった事実よりも、明には重い、どよめく波が心をざわつかせていた。

 しかし、頭は静かに、つい先程までのキツい態度のやり取りから、想像できた幽霊がどれだけ居たかと心配を計算してもいる。

 福喜の言った事はあながち外れてはいなかったのだ。

 何が何でも口にしたくは無い、できない………と言う固い決意よりはむしろ逆で、突つかれれば出てしまいそうな想いに、内心ビクビクしていたのは明の方だった。

【2008.10.1 Release】TO BE CONTINUED⇒

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